でん粉の歴史

でん粉製造の起源は古代エジプト及び、ギリシャであると考えられています。
ギリシャでは小麦よりでん粉を製造しそれをアミロン(amylon)と呼んでおり、 フランスでは小麦・その他の植物から製造したものをアミドン(amydon)と 呼んでいたとされています。
ギリシャ語のamylon,フランス語のamydonは共に製粉しないで得られる粉を意味しています。 「百科全書/L‘Encyclopédie()」のamydonnierの図版から 当時は小麦を水中に浸漬し、沈殿を取り出すことによってでん粉を製造していたことをうかがい知る事が出来ます。
中世の記録で正確に残っているものは多くありませんが、 16世紀のオランダではでん粉の大規模製造が行われていたとされています。 ドイツにおいては17世紀にトウモロコシを原料にでん粉を製造しており、 18世紀以降は馬鈴薯栽培技術の普及と共に馬鈴薯でん粉の製造方法が発達しました。

百科全書/L‘Encyclopédie

日本において「でん粉」という言葉が初めて使われたのは、宇田川榕庵の「舎密開宗(せみかいそう)」であるとされています。
これはイギリスの化学書(ウィリアム・ヘンリー著)がドイツ語・オランダ語を経て翻訳されたものです。(

日本のでん粉産業の歴史を調べると、天保5年千葉郡蘇我町において十左衛門が初めて甘藷でん粉を製造したとされており、 明治11年には北海道開拓使が馬鈴薯でん粉製造を試みたことが記録に残されています。

でん粉は生物にとって欠かすことの出来ない栄養素であると同時に、古代から現代にかけて人々の生活に常に密接に関わってきた重要な素材であると言えるのではないでしょうか?

舎密開宗(せみかいそう)

参考

  • 1. 日本及各國澱粉事情(岩瀨 亮、渡邊 惠三 著)
  • 2. L'Encyclopédie(Denis Diderot、Jean Le Rond d'Alembert 編)
  • 3. 舎密開宗(宇田川榕菴)(国立国会図書館ウェブサイトから転載)